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2016.12.29 Thursday

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    ビートルズと私(間瀬聡)「14. サルバ通り」

    2016.12.17 Saturday

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      14. サルバ通り

       

       

       サルバ通りのメンバーで、最初に誘ったのは高校時代の音楽仲間、雄登だった。東京で会社員をしているので、色々無理があることは初めからわかっていた。それでも加入してもらったのは、バンドにはロマンが必要だと思ったからだ。高校で出会った友人と再びバンドを組むだけで夢がある。バンドは友達と組むのが一番だと思う。もちろん組んでから仲良くなるのもいいのだが、俺たち友達だしバンドでもやろうぜ、というノリが僕には健全な気がする。どこかでずっとビートルズの物語に引っ張られているのだ。遠距離バンドでどうなるか分からないが、雄登にもロックバンドでライヴする快感を一緒に味わって欲しかった。2014年の暮れに、実紗と雄登と3人で名古屋今池のリフレクトスタジオと東山動物園の近くのstudio2462日間練習した。この時に既に出来たばかりの「浮き浮き」を試した。ビートルズの「I Feel Fine」もやった。

       

       

       もう一人のギターとベースには、カルマセーキ時代に一度だけ共演したことがあるスーパーノアのボーカル井戸健人君と、ベースの岩橋真平さんを誘った。2人ともそれぞれの活動があるので、正式加入は出来ないけれど、面白そうなのでサポートで参加してくれることになった。2人と初めて一緒に音を合わせたのも十三のLan Music Studioである。2015年の1月のことだ。「サガポー・ティアモ・ラヴャ」「フェスティヴァル・デイ」「レプリカ」を試してみた。

       

       

       サルバ通りのデビューライヴは、ひょんなことから参加が決まったハードロックカフェのコンテスト予選だった。合格して、アジアで勝ち抜いたら、スペインのフェスに出られるという謎のオーディションだった。僕らは短期間で練習したが、さすがにまだバンドの音は固まっていなかった。コーラスにも無理があったし、コンテストは負けた。しかも初ライヴが電子ドラム、という虚しいデビューだった。

       

       

       その後、改めてちゃんとした音響で、サルバ通りの新曲も合わせて、5月にknaveで再スタートを切った。この頃はまだ、カルマセーキ時代の曲の方が安定感があったと思う。新曲は「浮き浮き」「キンダーガーテン」「Keep On And On」「ジオラマ都市で」「シスター町子」の5曲を披露できた。なぜか久々の「短刀」もやった。

       

       

       このすぐ後に僕は、FootRock&Beerで行われた『ポール・マッカートニー再来日記念!勝手に前夜祭!The Beatles Night』というトークイベントに参加した。ビートルズについて自由に語るだけという乱暴なイベントだ。僕は自分の音楽にどのようにビートルズエッセンスを入れるかという話や、先に書いたような、我慢して聴き続けてジョンの曲を好きになる話などを披露した。その後、雄登とデュオで「All My Loving」「We Can Work It Out」「You Really Got A Hold On Me」をカバーした。こういうスタイルでのライヴも増やせたらいいなと思った。

       

       

       それ以降のライヴは思った以上になかなか決まらなかった。練習も月に1度全員で合わせられたら良い方だった。宣伝できる音源を作りたいということで、「浮き浮き」と「どうかセンセーション」をシングルで出すことに決めた。レコーディングスタジオは、空中ループの和田直樹さんが新設したばかりのstudio INO。和田さんにはカルマセーキのファイナルワンマンでPAもやってもらったことがあった。

       

       

       『浮き浮き/ どうかセンセーション』は完成したが、なかなか披露する機会がなかった。年内には東京で1本、京都で1本出来ただけだった。この頃には、結成当初に抱いた、回数は少なくても身のあるライヴをしっかりするバンドをやれればいい、という考えが変わってきていた。このままではいつまでも本物のロックバンドにはなれないと思ってしまった。もっとライヴをしたい。毎週ライヴをしたいと思うようになった。

       

       

       ロックバンドには色んな形があっていいと思う。人それぞれの生活に合わせたやり方でやればいいし、正解はない。だけど、僕がやりたいバンドはそれではなかった。気づくのが遅かったと言うより、それはずっと変わらないことだった。僕はビートルズみたいなバンドがやりたかっただけなのだ。ビートルズみたいに1+1+1+1=4ではなく、1+1+1+1=∞になるようなバンドがやりたかった。4人が揃って音を出した瞬間に宇宙が出来るようなバンドを。そういう意味で、(あくまで個人的な意見だが)僕にはサポートメンバーを抱えるバンドは向いていなかった。率直に言うと、同じステージで同じライヴをするメンバーが、メンバーに対してお金を払ったり受け取ったりするのに違和感を感じてしまうのだ。

       

       

       そしてバンドはやはり一緒に過ごした時間の長さがものを言うと思う。スタジオで何度も練習して、ライヴの現場で同じ空気を吸って、打ち上げで馬鹿みたいにビールを飲んで、お互いの良いところも嫌なところも全部見て、それでも一緒に転がっていく。生での時間の共有が必要不可欠だ。何をいつまでガキみたいな、夢みたいなことを、と思われても仕方ない。だけど、僕はそういうバンドにこそ本当に心を打たれるし、自分がやるならそういうバンドでありたいと願う。ただ、こればっかりは一人が張り切っても無理な話で、チームの力が必要だ。もちろん、色んな奇跡と、色んな努力も要る。だから、何度も言うが、ロックバンドは儚くて、尊くて、馬鹿で、世界一かっこいいものなのだ。

       

       

       そういう話をサルバ通りのメンバーにもして、みんな思うところがありつつも理解してくれた。そして2016311日にバンドを解体した。解散ではなく解体としたのは、僕だけは残って続けようという意思があったからだ。10年以上共にやってきた実紗もいなくなって、何年かぶりにまた一人になった。メンバーを募集して、何度かお試しスタジオに入った。なかなか上手いようにはいかないものだ。

       

       

       結局、サルバ通りでの最後のライヴ以来、僕は井戸君のソロ(イツキライカ)アルバムのリリースツアーでしかライヴをしていない。井戸君と岩橋さんとこんなにも早く一緒に演奏するとは思っていなかったけど、久しぶりのスタジオは素直に嬉しかった。ギターが下手な僕でも誘ってもらえるなんて、井戸君が僕を友達と思っているからに違いない。やっぱりバンドは友達とやるのが一番なのだ。

       

       

       それと、201610月にライヴハウスではないところでも一度だけライヴをした。特別な友人の結婚式で、一日だけカルマセーキを再結成させたのだ。僕と実紗と洸平と山ちゃんだ。結婚式までに2回だけスタジオで練習した。解散ミーティングより前のスタジオ以来、約2年ぶりだったので、みんなコーラスを忘れたり、歌詞やコード進行を忘れたりしていた。でもすぐに感覚が戻ってくるもので、ライヴでは『秘密計画』と『鍵は開けてある』から4曲、昔のように演奏できた。

       

       

       そのライヴが終わって、僕の中でもう何かが吹っ切れてしまった感覚があった。もうこのバンドを越えることは出来ないと感じてしまった。この先、僕が本当に心からやりたいと思えるバンドは出来ないと。僕は本当は音楽が好きではないのかもしれない。僕は音楽をやりたいと言うより、バンドがやりたいだけなのだ。久しぶりにカルマセーキをやってみて、それを実感した。

       

       

       バンドがないと、曲を作る気分にもならない。もちろん、メロディはよく思いつくのでiPhoneのボイスメモに録音しているけど、それを聴いて、いいねと言って、一緒に演奏してくれる友達がいないと駄目だ。

       

       

       だから、僕はここでサルバ通りの屋号も下ろすことにする。元カルマセーキ、元サルバ通りのただの間瀬聡になる。あえて音楽をやめるとは言わないし、言えない。音楽なんてやめられる類のものではないのだ。いつかまた自分でも凄くいいと思える曲が出来たら、谷尾さんに頼んで録音してもらいたいなと思う。それをまた、今まで僕の音楽を気に入ってくれた人達に聴いてもらえたら嬉しい。

       

       

       僕は今、高校教師になろうと思っている。10年間音楽しかやってこなかったから、お金もないし、何の社会的地位もない。それでも、僕の20代は他の誰にも経験できない、僕だけの最高の10年だった。良い音楽と素敵な人たちに囲まれて、もの凄く貴重な経験をさせてもらえた。この10年があったから、これからも何でもやっていけると思う。オアシスのノエル・ギャラガーがいいことを言っていた。「年をとればたくさんの重荷を背負うだろうし、音楽は人生で唯一重要なものではなくて、数ある重要なものの一つになってるはずさ。」(Twitter, ギャラガー兄弟名言迷言Botより)

       

       

      15. あとがき(「ビートルズと私」としての帳尻合わせ)に続く

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