スポンサーサイト

2016.12.29 Thursday

0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    ビートルズと私(間瀬聡)「2. イエスタデイを数えて」

    2016.10.04 Tuesday

    0

      2. イエスタデイを数えて

       

       小学校を卒業して、故郷名古屋に戻ってきた。父の実家を建て直した二世帯住宅に住んでいた。中学は家から歩いて3分の汐路中学校。汐路小学校と陽明小学校の生徒が通うことになる中学で、もちろん僕は友達ゼロからのスタートだった。岐阜弁と名古屋弁の微妙な差に気づきながら、調子をこきすぎず、クールすぎない適度な距離感でクラスメイトと接して、徐々に若者の名古屋弁を習得していった。

       

       

       中学で初めて学ぶ英語。ムカミ・カマウというケニア人が出てくる教科書で、なんか変だけど楽しそうだと思った。英語の先生はミスター黒崎だった。ミスター黒崎は山口県出身の新米教師だった。シャイで小生意気な新入生を相手に、未知の言語(言語とは思想だ)を教えていくのはなかなか難しいだろうなと思った。

       

       

       ミスター黒崎は、僕たちが英語に親しめるように、時々授業で洋楽を扱った。マイケル・ジャクソンの「Heal The World」やポール・マッカートニー&スティービー・ワンダーの「Ebony & Ivory」など。歌詞の聞き取りを目的に、簡単な穴埋め問題形式で、繰り返しリスニングした。ビートルズの「Yesterday」は多分、ミスター黒崎が最初に聴かせてくれた英語の曲だったと思う。歌詞を見ずに聴いて、曲中で何回「イエスタデイ」と言っているのか数えましょう、という課題。2回くらいみんなで真剣に聴いた。その時は、なんだか地味で暗い曲だなと思った。ジャミロクワイやスパイス・ガールズ、スキャットマン・ジョンなんかのヒット曲を聴いていた僕にはシンプルすぎて物足りなかった。その日の授業は「Yesterday」を聴いて終わり、次の授業でもう一回歌詞を見ながら聴いて、答え合わせをすることになった。

       

       

       家に帰ってから、僕はもう一回イエスタデイの数を確認したくなった。母に「うちにビートルズのイエスタデイ入っとるCDないの」と聞いたら、「お父さんの持っとるやつにあるんじゃない」と言われ、CDラックを探した。ビートルズのCDが何枚かあって、その中の2枚組の赤いやつにイエスタデイが入っていた。通称「赤盤」と呼ばれている、ビートルズ初期から中期にかけてのベストアルバムだ。ジャケットは子供みたいな髪型の怪しい外人が4人、階段に並んでニコニコ笑っていてダサいと思った。なお、その時ラックにあったのは、赤盤と青盤(後期のベストアルバム)、アンソロジーの13BBC のライヴ盤、『Abbey Road』くらいだったと思う。なんだ、父さんはミーハーなファンだなと後になって思ったものだ。

       

       

       さて、そのようにして家でもイエスタデイを数え、しかも歌詞カードをばっちり見ながら聴いたので、次の授業は余裕だと思った。イエスタデイはもう完璧なので、他の曲も聴いてみるかと、赤盤のディスク1を頭からかけた。ミスタードーナッツとの再会だった。あれ?これもミスタードーナッツ。あ、これもミスタードーナッツだ、と懐かしく、そしてどこか新鮮な気持ちで2分程度のポップソングを繰り返し聴き続けた。イエスタデイと全然違うなあ、こっちの方が断然いいなあと思った。このようにして僕はようやくビートルズと出会い直し、一気にビートルズにハマっていくのである(ちなみに課題の正解は「8回」)。 

       

       

      (次回「3. 赤盤の日々」に続く)

      スポンサーサイト

      2016.12.29 Thursday

      0
        コメント
        コメントする